「一本好書」第一期
『月亮和六便士(月と六ペンス)』(原著/サマセット・モーム)
名作と呼ばれる作品は得てしてつまらんものだが・・・これよかったわ。
ストーリーの概略だけ見てるとやっぱりつまらん話なんだけど、この脚本素晴らしいと思ったのが、終盤にこの作品の本筋、作者が物語を通して 描きたかったテーマを台詞として組み入れて"私"に語らせている。だから観客はその時点でこの下世話な恋物語というか修羅場を描いてる意味が解る。と途端に全体を俯瞰して見られる。お芝居でここまで見せられる(しかも小一時間で)って凄いわ…。
脚本も凄いけどいやもうやはりというべきか!"私"を演じる趙立新はスゴすぎる!!もう逐一スゴいと感嘆せざるを得ない、細かいところにまで気を配られたお芝居。絶妙な間、無言の中で表現する心情、もうさすが舞台人っていう。狂言回しだけど主人公ではない"私"は("私"から見ると)変人だらけの人物を立てる助演として、ストリックランド(演:黄維徳)やダーク(演:荆俊威)をしっかりと印象に残すために必要な立ち位置、そして代弁者として観客を導く。キャラクター作りももちろん上手いと思うけど作品の中での役割、必要な仕事をカンペキに計算してこなしてるなって。演出家っぽいというのか、他の役者さんとのバランス感覚が絶妙すぎる!(脇役が似合うと感じるのは結局そういうことだな、主役や物語を引き立てる技に長けてるっていう。)
"私"やダークが会話から回想シーンへスッと入っていくその自然さとか、ライティングで即座に場面転換するところとか、舞台らしい演出がやはりイイ。創意工夫と想像力がギュッと凝縮されてる、それが舞台の醍醐味。
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