我が王は周の文王のようになりましょう、孫権にそう告げたという仲達に、しかし魏王は怒るでもなくその通りだと言う。わしは漢臣だ、後世の史書に漢の反逆者と記されたくはない。わしが天下を治める運命にあるというなら周の文王のように死んだ後に追号されればそれでよい、と。仲達はさすが魏王は高尚なお心をお持ちだと持ち上げる。が、お前は何でもお見通しでわしが今まで何度お前を殺そうとしたかもわかるのだろうと返される。六回でしょうかと答えると、魏王は「今日を入れて七回目だ。」と言った。東呉との同盟がまずかったわけではない、ただ夢を見たからだという。三匹の馬が一つの桶の餌を食べている夢。その夢の解釈を問われ仲達はあれこれ適当な事を言って逃れようとするが、三匹の馬は司馬を意味するだろうとずばり突っ込まれた。仲達は必死に、わたしは馬でもロバでもないし馬と言うならわたしは馬革に屍をつつむ覚悟(戦場で戦って死ぬ覚悟)で犬馬の労も厭いません(主人のためなら何でもやります)と答える。魏王は笑い、七度も殺したいと思ったのにまだ生きているのはお前だけだと言う。そう思うのはこれで最後にして下さいというとまたその言葉尻を掴まれわしがもう永くない(最後→最期)と思うのかと言われ仲達はひたすら平伏する。魏王は言う、お前の聡明さがお前を殺さなかった理由だ。今対立している三国の中で魏国は兵力は最強だが内政最も乱れている。お前が子桓を助け天下を統一する夢を達成してほしい。
そう言うと魏王はふらふらと立ち上がり倒れてしまった。
魏王が倒れたと聞いて子桓は急ぎ駆けつける。魏王は留守の間に子桓が都で起きた反乱を抑え厳格公正に処置したことを褒め、今まで厳しく接し叱ってばかりだったかもしれないと呟く。やっと父から褒められた…子桓の頬を涙が伝う。
魏王は一巻の書を取り出す。これは三年前に渡そうとしていたもの、子桓を太子に立てると書いてあった。子桓は父と共に戦い必ずこの乱世を平定してみせると誓う。魏王はあの司馬懿は新時代の創生には必ず役に立つが友人として接してはならない、臣下として扱い決して情に流されるなと強く言いつける。王が自分の事を「孤家」「寡人」と言うのは決して形式上の事ではないのだ(トップとは孤独でしかるべきなのだ)と…。
関羽は敗北し孫権によって殺された。その首は魏王の元へと送られた。魏王は名将・関羽に最大限の敬意を表し関羽の体を木で作らせ首と一緒に手厚く葬った。
魏王は司馬懿を連れ郊外へ出向く。多くの友そして敵が一人また一人とこの世を去っていく、そして自らもそう長い事もあるまい。劉備、孔明、孫権…これらの敵はお前と子桓に残していく、司馬懿にそう告げる。
目前に農村の親子が歩いていくのが見えた。子供はこの洛陽に伝わる歌を歌っている。
「15才から従軍し、80才でやっと故郷へ帰る。
道で会う故郷の人々に訊く、我が家には誰がいるだろうか。
ごらんあそこに見えるのが君の家、松柏がうずたかく生い茂り、
中庭は野生の雑穀が伸び、井戸には野生の葵が生えている。
雑穀で餅をこしらえ、採った葵で羹を作る。
餅と羹がすぐにできたが、誰が食べてくれるだろうか(誰もいない)。
門から出て東を見る、流れ落ちる涙は衣を濡らす。」
長年の戦によってこの歌のように家族が皆いなくなってしまった世帯は数知れない。百姓らが安らげる世界を、自分には成し得なかった太平の世を子桓と共に作ってくれと魏王は司馬懿に託すのだった。
新年を迎え恒例の祝賀行事が洛陽の宮殿で開かれる。魏王は皆の前で、これまでに自分を支えそして亡くなっていった兄弟親族や臣下、戦場に散った英雄たちに杯を捧げる。
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これ神回だわ…。
神・曹操にもそろそろご退場の気配が。楊修以上に寂しすぎるっ!
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